特集 老人病の知識と看護
老人特有の疾患
8 更年期障害
九嶋 勝司
1
1東北大
pp.81-89
発行日 1957年10月15日
Published Date 1957/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910447
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I.更年期
従来『更年期とは成熟期と老年期との移行期を意味する』と言われて来たが,勿論,この定義に誤りがある訳ではないが,このような定義は具体的でないため,実際には殆んど役立たない。そこで,更年期のうちで,最も顕著な特徴は閉経であるから,更年期は所詮,閉経期であると割切つた定義を採る学者もある。しかし,閉経は,言わば一つの点を指すものであり,更年期とは一定期間,即ち線を意味するものであるから,之を同一に扱えないのは分り切つたことである。分り易いとか,便利だと言うことと正しいと言うこととは必ずしも一致しない訳である。又,或本では,『更年期とは閉経に至るまでの一定期間である』と書いているものもある。閉経は決して,老年期の初めを意味するものではないから,この定義も可笑しい。結局,このような事柄を考え合せると,次のように定義することが正しいのではあるまいか。『閉経前後の内分泌環境の異常に変動する時期を更年期と言う』。内分泌環境の変動と言つても,閉経以外には明かなものは何も無いのだから,やはり具体性に欠けると言われるかも知れないが,しかし,最近の内分泌学は,急速な進歩を遂げて,ホルモン測定法が着々と実用の域に達して来ているのだから,ホルモン異常を完全に知ることが出来る時期は,近き将来,否,既に大体可能となりつつあるのである。
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