特集 老人病の知識と看護
老人特有の疾患
7 骨と関節の老化現象
片山 良亮
1
1慈恵医大
pp.73-80
発行日 1957年10月15日
Published Date 1957/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910446
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諸行無常生者必滅と云う自然の原則が厳然として生物の運命を支配している以上,その老化を人為的に防止し或は更に若返らせる事の困難な事はもとより言を俟たない所であります。従つて不老不死は奏の始皇帝以来の人類の悲願で,多くの常識家や学者はその達成を夢みながらその定命に抗し得ないで,押し寄せる老化の荒浪に淡われて行つたのがその姿であります。故大隈重信侯も120歳を主張しながら84歳でなくなられています。尤も戸籍のはつきりしない長命者は沢山ありますが,はつきり判つているのでは113歳が日本の最長寿者とされていますが,それにしても誠にはかないものと申さねばなりません。
ところで人間は年をとりますと次第に体力が衰え,食慾も粘力も頭の働きも鈍くなって来ますが,いくら長寿をしても余りぼけてしまつて,ただ息をしていると云うだけではその甲斐がありません。斯く云う私も老人病の原稿を書かされるようでは既に老境に入っていると世間の人が見ていると憶測されますが,誠にあわれな事であります。然し,人間の体はよく出来たもので,体を適当に使つておれば,年をとつても体は長い間頑丈でおられますし,適当に頭を使つておれば,いつまでもしっかりしているものであります。植物学の牧野富太郎先生にしても,政治家の尾崎行雄氏にしても体が動かなくなつてからでも頭だけは随分しっかりしておられた様子であります。
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