随筆
ユニークな美しさ
松田 ふみ子
1
1サンデー毎日編集部
pp.153-157
発行日 1957年4月15日
Published Date 1957/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910326
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人間の欲望はいろいろあるが,中でも一番強いのは,自己発表の欲望だろうと思う。ラジオの三つの歌にしても,素人のど自慢,さては,何でもやりましようなど,みんな人間の,自己発表欲をくすぐつて成立つている。ちかごろジヤーナリズムをにぎわしている投書夫人にしたところで,その欲望のあらわれであることは,いうまでもない。
女の人がきれいにお化粧するのも,いい洋服を着たがるのもみんなその欲望の変形である。それをどの人も知つてか知らずか,年々歳々,新しいフアツシヨンが作られたり,魅力化粧だの,悩殺メーキヤツプだのというキヤツチフレーズをつけて売り出される。若い人たちは,ついその言葉に悩殺されて,なけなしの財布から,血のにじむような金をとり出して買つて来るが早いか,鏡の前でベタベタとつけて見て,〃何アンだ,ちつともきれいになりはしないわ〃と嘆くのである。
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