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外国映画鑑賞の手びき
野口 久光
pp.37-39
発行日 1957年3月15日
Published Date 1957/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910300
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今年は新春から「戦争と平和」「ジャイアンツ」「八月十五夜の茶屋」といつた大作が出そろつて話題を呼んでいる。「この三作品合せると正味8時間を越える長さになり,実際に二館の映画館に行くとなると10時間以上かかることになるから,よほど暇のある人でなければ手軽に見るわけにもいかない。それにしても何もロードショウ劇場に出向かないでも,機会があつたら見ておいて損のない作品である。「戦争と平和」は今日まで誰も映画にすることの出来なかつたトルストイの長篇小説をとにかくも3時間弱の映画にダイジェストしたもので,アメリカ,イタリアの合作,実際にはヨーロッパで撮影されたまじめで見ごたえのある大作である。「ジャイアンツ」はジェームズ・ディーンの最後の出演ということで騒がれている映画であが,アメリカを代表する閨秀作家エドナ・ファーバーの小説の映画化で,これまたアメリカ映画としては稀に見る深い内容のある作品である。即ち恋愛結婚をしたアメリカ西部テキサスの野人と,東部のヨーロッパ的教養をもつた女性との性格的対照,同時に男性と女性との宿命的な対立といつた大きなテーマとともに,今もアメリカの大きな社会問題となつている人種的偏見に対する主人公の戦いが力強く印象づけられていて感銘深い。
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