講座
輸血について
村上 省三
1
1日本赤十字社輸血研究所
pp.21-27
発行日 1956年7月15日
Published Date 1956/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910143
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今日では,輸血といつても別に大げさな治療手段ではなく,ことに大病院では毎日相当数の輸血がおこなわれております。その手技は比較的簡単で,一寸習熟すれば誰にでも容易におこなうことができます。しかしまかりまちがえば,人のいのちをも奪うほどの大きな副作用を呈し得るものなのですが,日常輸血にたずさわつている人々が,たれもが正しい輸血に関する知識をもつて,ことにあたつているかと申しますと,残念ながらそうとは云いきれません。輸血に関してはまだまだ不明のことがらが多く,そのすべてを知りつくすということはもとより不可能ですが,一応まごつかない程度の知識をもつていることは大切なことと思われます。そのような観点から輸血ということを少しほりさげて考えてみましよう。
まず血液ですが血液は大きくわけて,新鮮血と保存血とにわけられます。保存血とは血液を前もつて抗凝固剤を入れた瓶の中に採血し,これを4〜6℃の冷蔵庫の中に保管しておいて,用にのぞんで,そこから出して使用されるものであります。新鮮血が給血者から採血して,すぐその場で患者に輸血されるのと違つて,一定期間さだめられた温度に保存されたものです。それでは今日新鮮血と保存血とはどちらが多く使用されているでしようか。これに関する信頼すべきデーターはありませんが,わが国では全国的にみればまだまだ新鮮血の方が保存血よりも多いと思われます。
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