講座
病臥位を科学する
永井 敏枝
1
1東京鉄道病院看護学院
pp.8-11
発行日 1956年7月15日
Published Date 1956/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910140
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病める人に対して,気持よく療養でき,一日も早く健康に導いてあげることが看護の根本であります。それには肉体的面からくる苦痛を取除く事は勿論,精神的,感情的苦悩,重圧をとり去つてあげ,環境を整えてあげなければならない事は当然のことですが,今月は実際行われる看護技術について検討してみました。先ず私達人間の姿勢に於て,どの姿が最も楽な位置であるか病気の時に安臥させるのは何故であるか最も楽な位置であるかを考えてみます。姿勢には直立位,坐位,臥位等を基本とするさまざまの姿がありますが,その中,直立姿勢は最も進化した姿勢というべきもので,人間以外には猿にみられる位であります。(しかし猿では正常の直立位とはいゝ難いが)直立姿勢を維持するためには各部の関節の回転を停止し,骨を一定の位置に固定しておかなければならず,それには関節の囲りの筋肉や,靱帯が適当に拮抗的に働いているわけです。このような身体の姿勢並に身体の運動に際しての平衡に関する反射は,姿勢反封といつて全身の知覚並に迷路性の反射で保たれているのです。即ち①局所平衡(静位)②分節平衡反射,③全身平衡反射であり,①は重力の刺激に基き,②は一方運動が他側に及ぼす反射であり,③は空間に於ける頭の位置によつておこる頸筋及び迷路反射であります。
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