今月の言葉
新年を祝い新年に想う
K
pp.9
発行日 1955年1月1日
Published Date 1955/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200766
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昭和30年の新春を迎え本誌の第7巻の第1号をここに刊行するに当つて,全国の愛読者諸姉の御健康を先ず慶祝せずにはいられない.終戰以来数えて10年それをただ夢のような10年間だつたとは言えないように思う.終戰後しばらくの間の困窮や混乱,私ども多数の者たちは,ほとんど茫然自失のような無気力状態の中に駐留軍を迎えたことを想い起す始末である.引続いて起つた進駐軍指令下の行政時代も決して短い期間とは感じられなかつた.皇族をはじめ,貴紳財閥の生活はもとより,露天商や浮浪者,孤児の生活に至るまで進駐軍の意見が影響しないものはなかつたのであつたから,我が助産婦の世界とてもこれに動かされずはいられなかつた.
保健婦助産婦看護注の制定施行,助産婦養成の教科課程の大改革,国家試験制度,登録制度の新施,その他児童福祉法優性保護法等々数え挙げれば限りなく幾多の新事件,新問題が,大小さまざまな波紋を私共の世界にも呼びおこした.特に何よりも重大且つ深刻な戰後の助産婦界の問題は,申すまでもない全国の出産数の大変動ということにあつた.昭和23年ごろまでは1時的の戰争後の必発現象として,出産数の激増がみとめられたのであつたが,それ以来は毎年の激減に次ぐ激減を見ている.
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