——
私の考えるナースの倫理としてのヒユーマニズム
大井 百代
1
1国立東京療養所
pp.54-55
発行日 1955年6月15日
Published Date 1955/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909856
- 有料閲覧
- 文献概要
4月号の教養講座の結論として書かれているナースの倫理は看護の仕事の基礎となるべきもので,ナースが常にめざして進まなければならない目標だと思います。既に看護婦として病人に接している私共は目標としてより此の様な論理の上に築かれた知識と技術を日々の勤務の上に実踐して行かなければならないと思うのです。しかしそれは本当にむずかしい事です。総べて対人的関係の中での毎日の勤務からは自分の感情に負けてしまう事も多く看護婦という仕事の持つ厳しさをつくづくと感じさせられます。こうした問題も看護の仕事と非常に関係の深い宗教の中で信仰を持つて自己を超越し心の和ぎを得て他人に奉仕する精神を養う事が出来たら本当にいゝと思う事があります。しかし実際にはそうした事にも問題があり誰もがそうした生活に自分を置くということは出来ません。又専門的な職業である以上その職業の持つ特殊性を特別視して天職であるとか,使命であるということを全部の人に強く当てはめるわけにはいかないと思います。看護婦は自分の選んだ仕事の重大性をあらゆる角度から理解し「職業に対する自覚」を強く持つ事,又看護婦がその職をよりよくはたすためにそれができやすくする環境を皆で造つてゆくことが大切だと思います。
私生活や勤務の条件の悪い環境の中で深い思いやりを持つて病人に奉仕する心のゆとりを持つ事は非常にむずかしいと思うからです。
Copyright © 1955, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.