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汗嚢腫について
奧井 重敬
1
,
增田 圭喜
1
1長野赤十字病院皮膚科泌尿器科
pp.163-165
発行日 1953年3月1日
Published Date 1953/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200933
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汗腺に關係のある腺腫或は嚢腫には汗腺腫と汗嚢腫が擧げられるが,此の中,前者は一種の母斑症の範疇に入れられるべきものであり,後者は一種のRetentionscysteであるために,病理解剖學的には明かに一線を劃さるべき疾患ではあるが,臨床上の鑑別は必ずしも容易ではない。即ち臨床上鑑別の根據となる點は,1.主病變の存在場所2.透見性の有無,3.内容物穿刺の有無等であるが,結局は組織學的検査を俟たずしては其の區別が誠に難しいと云わざるを得ないのである。
病理組織學的所見としては汗腺腫は上皮細胞の迷芽より發生したと考えられるNaevi epitheli-omatosiに屬すべき一種の皮膚腫瘍で,その組織は眞皮上層に於ける索状の上皮細胞索と多數の嚢腫とからなり,然も此の嚢腫壁は2層乃至數層の細胞層よりなり,然も此の嚢腫は時には汗腺管と關係のあるものも有するのである。一方,汗嚢腫の組織としては,その主要變化は汗管に關係のある嚢胞形成で,然もこれは眞皮表層中に存在することである。然もこの嚢腫壁はすべて1層の扁平上皮細胞より成り,その他は何らの炎症性或は腫瘍性の細胞浸潤を全く伴わないことが特徴となつていて,汗腺腫とは全く別個な疾患であることは疑いのない所である。
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