発行日 1952年10月15日
Published Date 1952/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907151
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纎維製品の知識
3絹Silkは天然纖維のうちでは一ばん丈夫なものである。弱いように感ずるのは細いからで1デニール當り3-5gはナイロンに次いでの強纖維で一時落下傘Parachuteに絹はなくてなくならないものとされたのはそのためである。猶絹は保温性も大で,冷たく感ずるのは織り方や糸の造り方が緻密だからで,眞綿の暖かさを思うとすぐ理解できると思う。そして比重は1.36で羊毛の1.32に次ぐ輕さである。そこで病人や老人子供の衣類としては輕く暖かく申し分ない衣料だが,高價なのと洗濯に便利でない點が缺點である。というわけは絹は毛と共に動物性纖維であるが,その成分が蛋白質である關係から,大へんアルカリに弱い,即ち洗濯に用いる石齢ソーダを初め皆アルカリ劑であるから,その點不利であるが頻繁に洗濯を必要としない疲具や上着等に輕い保温性の絹を用いるこは特策と云える。
絹の主成分はフイプロィンFibroinと云つて一種の蛋白質であるが,蠶の口から吐き出されるときは二本一所にまとまつて膠質のセリシンSericinで固められて出てくる。そこで顯微鏡で生糸を擴大してみると,必ず二本の糸かち成つているので他の纖維とよく區別がつく。横斷面をみても二本の纖維の喰ついていることがはつきりと認められるのである。
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