発行日 1951年9月15日
Published Date 1951/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906921
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私たちは過去に於て文豪イブセンの多くの脚本や劇から種々の社會道徳問題に就て考えさせられました。ところが私たちは最近アメリカの實社會から日々報道される事件を讀んで社會問題中殊に醫學に關係した問題を度々考えさせられます。例えば先頃日本のジヤーナリズムにも採り上げられて論ぜられた安樂死(mercy Killing)などもその1例でしよう。ところが最近Rh因子に關係した問題で,私たちが如何に批判したらばよいかと云う事件が報道されています。
元來Rh因子は血液型に就て新しく發見された事實で,これは輸血の場合と結婚した夫婦に子供が出來る場合に主として注意しなければならないことを,アメリカの血液型を研究している醫學者から指摘されていることは,以前この雑誌の記事として掲載されたことがありますから御承知のことと思います。今次に述べようとする事件はRh因子の關係を持つた夫婦の間に出來た子供に關する事件です。米國シカゴ市に比較的年の若い夫婦がおりました。血液型的にその夫はRh因子陽性,妻はRh因子陰性でした。夫婦間にこの樣な血液型の差異があると,その間に産れる子供は屡々胎兒性赤芽細胞症という特別の病的状態を持つて,産れる前の胎兒の時に死亡するか或は産れても誕生後間もなく死亡します。この夫婦は第一回の妻の妊娠の時には幸に,それが起らず無事に男兒を産んで育ちました。
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