名詩鑑賞
雜草—大關 松三郞
長谷川 泉
pp.52-54
発行日 1951年6月15日
Published Date 1951/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906881
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「土の子のうた」として,すばらしい詩魂をうたわれる詩がこゝにある。「雜草」は大關松三郎の詩集「山芋」の中におさめられている。大關松三郞は太平洋戰爭の犠牲者として南海に消えた若い魂である。殘された詩集「山芋」は彼が小學校を卒業する時,その1年間に書いた詩を集めて作つたものであつた。それは僅か12歳の少年の生命の歌であつた。それは松三郎の手によつて鉛筆で記され,またカツトや裝幀のこらされたものであつた。
いま公にされている「山芋」は,松三郞を士の子の生命の歌に高める指導者として大きな役割を果した恩師寒川道夫氏によつて編まれたものである。それは戰爭の嵐によつて空白に歸した松三郞の詩を異常な努力で集め再生した寒川氏の熱意によつで世にあらわれたものである。松三郞の同級生や全國にちらばる寒川氏の知人たちが戰後の混亂のなかにあつてこの困難な仕事に協力した。このようにして1篇1篇集つたものを,寒川氏の記憶で,原作の時のおもかげを生かすように編まれたのが「山芋」である。鉛筆の原本では27,8篇あつたものが公刊された「山芋」では23篇になつている。
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