発行日 1951年1月15日
Published Date 1951/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906778
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
衣服氣候
衣服は2,3枚重ねてきているのが普通である。そうすると着物と着物との間に室氣の層があつて,それらがある程度の温かさを保つているわけである。そのような空氣層のうちのいちばん深いもの,すなわち,肌着と皮膚との間の空氣層の温熱的性質はわれわれの保温のうえに重要な意味をもつている。そのために,この部の室氣の状態を衣服氣候という。われわれの保温がよく行われているときは,衣服氣候の状態は,温度が31〜33℃,濕度が40〜80%であつて,そのうえに,ごく僅かな氣流がある。このようなとき,われわれは暑からず,寒からず最も爽快に感じているのである。この温度や濕度にある範圍があるのは(温度は31℃から33℃に及ぶ),人によつて寒暑の感じが多少ちがつているからである。しかし,その範圍はけつして廣いものではない。個人にとつてきまつた衣服氣候の状態が,それよりも温度が低く,濕度がすくなく,また,氣流がありすぎると,その人は寒く感じて保温が十分でないといえるわけである。これと反對であれば,暑くるしいのである。
このような寒暑の感じがおこるのは,實は體温の生成と放散とが釣合わないからである。體温は身體内の酸化作用によつてたえず作られているが,まだ,それは露出した皮膚や呼吸器の粘膜から去つてゆくとともに,大部分は衣服下の空氣層に移つてゆく。
Copyright © 1951, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.