ルボルタージユ・3
この病世になからしめ—長島愛生園
芳田 藤野
1
1愛生園
pp.16-18
発行日 1949年9月15日
Published Date 1949/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906523
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癩は昔から遺傳である。血統を引くものであると言はれまして,二代三代の後までも子女の婚姻に支障を來すなど,肉體的のみならず精神的にまで二重三重の苦しみがあります。その樣な事から病氣に罹つた人は故郷を人を捨ててあてもない流浪の旅に出る。そして誰でも一度や二度は死を企てて人生最大の悲しみを味はねばならぬ悲慘此の上もない病氣ですが,現在では10ケ所の國立療養所が出來まして,患者さんは療養所で安心して治療に勵んでゐます。終戰後日本は丈化國家建設に邁進してゐますが,癩の如き非文化的な病氣は1日も早く絶滅せねばなりません。
日本より癩を根絶する方法は,現在の患者さんを隔離することと,遺傳であると云ふ誤つた觀念を捨てて,傳染病であるといふ點に社會的認識を深めることが必要です。遺傳であるといふところから單に患者さんのみならず,1家親族までが社會から白眼視されるのでございます。それでは此の患者さんたちを隔離收容してゐる愛生園の實情を少し書きます。一般社會から患者さんを隔離するためには,完全な設備を整へまして,患者さん自身が一生を托し,安心して入所して來る樣な温かみのある所でなければならないのでございます。
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