発行日 1949年2月15日
Published Date 1949/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906427
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今次大戰中アメリカ陸軍省では「女性アン」と題する小冊子を發行して軍人間に世界で最も危險な女性,即ち羽斑蚊を紹介した。この小冊子は決して事實を誇張したものではなかつた。戰線の東西を間はず或る地區では他の何れの原因に依るよりも多くの兵士がこの羽斑蚊のために廢兵になり又その生命をも失ふに到つたものも決して少なくなかつた。戰勝後3年を經過した今日この女性アンは昔と同じように全世界を脅かしている。その理由は,この雌の羽斑蚊は現在知られている限り世界で唯一の屡々,致命的な,又一般に身體を虚弱化するマラリヤ病の媒介者であるからである。
1948年の夏ゼネーブで開かれた第1囘世界衞生會議では,世界衛生協會がこのマラリヤ問題を第一義的なものとして取扱ふべきであるとする報告書が提出された。世界衛生協會の中間委員會はその會員諸國(18ケ國)の心證のみならず國際連合の食糧農業委員會の後援によつてこのような勸告を行つたものである。世界最大の農業地域の住民が世界で最もひろく蔓延し,特に熱帶及び半熱帶地方で猛威をふるうこの病氣のため弱體化されている間は世界の食糧事情が向上する見込がないと云ふのが食糧農業委員會の意見である。
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