発行日 1948年11月15日
Published Date 1948/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906395
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ナイチンゲール嬢の司令部は上述の巨大な建物の四すみにある,その一角の物見櫓の一つがそれでした。そこに四方にドアがありその中央に大テーブルがあり,その卓上には請求されるいろんな衞生材料が常に積みかさねられあとからあとから新らしいのと交代されました。又床にも隅々にも品物が山の様につまれてました。白帽子をかぶつた看護婦はひつきりなしに出入してました。この大部屋の一角に更に小部屋屋があり「首席貴婦人」及び看護婦,醫員,將軍,下働きなどを相手に次ぎ次ぎに會議がありました。彼女はこれ等の人々に何時も同じ様に丁寧で,明白に,靜かに,且つすぐ役に立つ助言や命令やを傳へるのでした。又つゞけさまに數時間も手紙を書くのでした。シドニー・ヘルバート(陸軍大臣)及び其夫人,總司令官ラグラン卿へも書きました。同氏は初めは孃を嫌つてましたが後には親友中の親友の一人となり且つ禮讚者の一人となつたのでした。又故國で悲んで居る兵隊たちの,妻女,母親姉妹へも書くのでした。
彼女へは一度に千通づゝも手紙がつくのでした。勿論自分だけで返事が書ききれません。しかし出來る丈け書ぐのでした。ヘルバート家から一通の手紙がつきました。それはヴインザー宮からのでヴィクトリア女皇の手紙でした。陸軍大臣へあてたものです。「ヘルバート夫人に傅言を頼みます、朕はナイチンゲール孃とブレースブリッヂ夫人から,ヘルバート夫人に届けられる報告を,なるべく度々見たいと告げてください。
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