発行日 1948年6月15日
Published Date 1948/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906335
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皆さんシュワィツァー博士と云う名前を御聞きになつたことはありませんか。音樂に趣味を持つて居られる方はバッハに關する博士の種々の著述で,又歐州第一のパイプオルガンを彈くオルガニストのシュワィツァー博士を御承知でしよう。それから,これは少し皆さんとは縁が遠いのですが,カントの哲學やキリスト教の神學に關する哲學論文の著者,即ち神學者或は哲學者として知つて居られる方もありましよう。シュワィツァー博士は音樂論者,パイプオルガニスト,哲學者,更に神學者,何れにでも有名な人です。然し今日茲で御話するのは御醫者として又傳道師としてのシュワィツァー博士のことに就てです。博士は今年とつて73歳のフランス人で,現在はアフリカの佛領コンゴーの奧地ランバレーネと云う所に居られる方です。それでは,何うしてそんなアフリヵの未開の土地に住んで居られるのでしようか。それには深い譯があるのです。このことを既に御承知の方もあるかも知れませんが,未だ御承知のない方もあるかと思つて,私は今こゝにそれをかい摘んで御話致しましよう。
シュワィツァー博士はフランスのアルサス州の小さい村ギュンバッハで牧師の息子として生れました。そして子供の時から非常に幸福に育てられました。時には仲間の子供から,それを羨まれたり,妬まれたりする程でした。ところが,シュワィツァー博士にはそれが寧ろ苦痛でした。
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