看護学講座
病理學
畑 秀雄
pp.52-56
発行日 1947年9月15日
Published Date 1947/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906236
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炎(炎症)Inflammation
炎又は炎症とはどんな病變であるか,その定義を簡單に下すことはむつかしい事であるとされて居る。即ち後に述べるやうに炎と稱せられる場合の變化は錯綜して居て甚だ複雜なる病的機轉の綜合された状態であるからである。炎症の病候として臨牀的に認められる變化と形態學的即ち解剖,組織學的に認められる變化とがある。臨牀的に認められる所見即ち臨牀的症候群として從來Galen(Claudius Galenus)の學説に從ひ發赤(redness),温熱(heat),腫脹(swelling),疼痛(pain)の4つを主要症候とされて居る。それに機能障碍(impaired function)を加へて炎の5主徴(five cardinalsymptomes)とも稱せられる。然し此等の症候群は生活時には明瞭に認められる場合でも死後には判らなくなつてしまうので,死後でも確め得られるやうな形態學的變化に基づいて炎の定義が定められることが至當であるとされて居る,殊に細胞病理學(cellular pathology)の立場から所謂臨牀的症候群が明瞭であると否とに拘らず組織,細胞の形態的變化の基礎の上に炎の定義がうちたてられることになつて居る。炎の形態的症候群とは何か,概括すると
(1)組織の變性,壞死 (2)循環障碍及び滲出機轉 (3)組織の増生と云ふことである。
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