特集 痴呆のスケール—きめこまかなケアのための客観的評価尺度
痴呆のケアに必要なアセスメント項目
藤本 直規
1
1藤本クリニック
pp.1107-1120
発行日 2001年12月1日
Published Date 2001/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906064
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はじめに
痴呆患者では,認知機能障害,感情障害,人格障害などの中核症状と精神症状,行動障害などの周辺症状,それにともなう生活障害など多彩な症状が組み合わさって出現する.しかも,これらの症状は,患者自身の身体状況,心理状態,環境などによって左右され,待合い室で理由もなく妻を怒鳴っていた患者が診察室に入ったとたんに穏やかで知的な会話を続けるといったことは枚挙にいとまがない.そこで,同一の痴呆患者の診断,治療,ケアにかかわっていても,職種やかかわる場面の違いによって,その患者の病像の理解がかなり異なることがある.たとえば,ある程度症状が進行したアルツハイマー型痴呆患者を考えてみても,外来診療を行なう医師など生活場面での観察ができない職種は,記憶障害,見当識障害,構成障害などの評価はできるとしても,家族に対して暴言を吐くといった人格障害や,同居家族やケアワーカーにとって大きな介護負担となる生活障害の正確な把握は困難である.逆に,日々介護に追われる介護者やケアワーカーは,食事を残したり,若衣がだらしない原因が半側空間無視や着衣失行であることに気づかない.
このように,痴呆患者に対して支援を行なおうとする際に,援助者であるさまざまな職種間で症状の理解が異なれば,当然,治療やケアの方針が一致せず,適切なケアパッケージを組み立てることが難しくなる.
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