特集 院内感染の“なぜ”が知りたい
病院の中でなぜCompromised hostが生まれるのか
萩原 将太郎
1
1国立国際医療センター研究所
pp.119-123
発行日 1998年2月1日
Published Date 1998/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905521
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はじめに
近年,医学の進歩の結果,さまざまな病原体に対する化学療法剤が開発されほとんどの感染症を治療できるようになりましたが,感染症の発生頻度やそれによる死亡が減少したかと言えば決してそうではありません.このことは,何を意味しているのでしょうか.一見どのような感染症も強力な抗生剤を使用すれば即座に克服できるように考えられがちです.しかし,現実には感染症の克服には抗生剤だけではなく患者(宿主)の“抵抗力”が抗生剤と同等またはそれ以上に重要な要素であるのです.また,患者(宿主)の抵抗力が減弱した場合,通常では起こりにくい感染症が誘発される可能性が高くなってきます.この“抵抗力の減弱した宿主”はHIVなどの疾患や先天的な免疫異常症に代表されますが,これら少数の患者のみならず実際にはもっと身近な医療の現場に数多くの“抵抗力の減弱した宿主”が存在していることを私たちは認識しておかなくてはなりません.
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