連載 道拓かれて—戦後看護史に見る人・技術・制度・10
機械化の進行と看護婦の機械的対応
川島 みどり
1
1健和会臨床看護学研究所
pp.974-978
発行日 1997年10月1日
Published Date 1997/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905451
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機械化を支える連帯のシステム
従来だったら生き続けることさえ困難であった状態でも,救命はおろか,入院せずとも生きてゆくことが可能になった現在,よく言われる機械化による人間疎外や機械への従属感を克服して,積極的な闘病に向かうことのできる原動力・条件は何か.その鍵は「科学・技術の限りない可能性への確信と,社会的な連帯(病者と病者,病者と健康者)にこそある」と言う上林は,その根拠を次のように述べる.
「ペースメーカーを挿入して3年あまり,定期往診の老人の心臓は今日も休むことなく毎分70,正確なリズムをうっている.しかし,訪問看護,介護者が来てくれるわずかな時間を除いては,1人電気ごたつで暖をとり,前日の冷えた食事を食べざるを得ない.石油ストーブ,ガスコンロはあっても1人では危なくて使えない.心不全には利尿剤,ジギタリス,肺炎には抗生剤と,決定的な危機には対処できても,日常の人間生活の基本とも言うべき暖房や食事が確保できない.このような状況こそ,現代医療,生活の縮図と言わざるを得ない.生活,福祉を分断された医療をどのように克服できるか,ハンディを負った人間が生き甲斐を感じられるような社会の真の福祉の確立こそ“人工臓器時代”の課題ではないだろうか」と1).
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