グラフ
診療所の新展開—在宅療養を全面バック・アップ
八木 保
,
本誌
pp.396-399
発行日 1996年5月1日
Published Date 1996/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905075
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これまで診療所は,看護職にとって決して魅力ある職場ではなかった.医師の診療を補助することが主な業務で,看護職の持てる力が十分に発揮される場ではないと考えられてきたからだ.言うまでもなく,その背景には,ひたすらに高機能医療を目指して歩みつづけたこれまでの日本の医療界にあって,診療所自体が活力を失いつづけたという経過がある.ところが,人口の高齢化傾向がますます強まってゆくなかで,疾病構造も変化してゆき,いま,地域に根ざした診療所の再活性化が社会的要望となりつつある.
あいち診療所は,6年前,医師である畑恒土つねとさんと看護婦である藤村淳子さんとの共同出資によって,新興住宅地である名古屋市天白区に設立された.当初から明確に在宅医療の拠点となることを目指して運営されており,「在宅ケアを支える診療所全国ネットワーク」の中核的な存在でもある.現在では,診療所2か所に訪問看護ステーションも併設され,人員は60名を越える布陣に拡大している[医師3名,看護婦13名(うち保健婦3名),PT,OT,言語療法士,栄養士,介護福祉士など].同診療所は,訪問診察,訪問看護,訪問リハビリ,訪問言語療法,ショートステイ,デイケアと豊富なメニューを持つが,注目すべきは,それらのメニューが緻密に体系立てられていることである.在宅療養が最適かどうかの判断をも含めたアセスメントのための評価入院,一元化された患者記録,週1回の合同検討会など,各専門職の提供するサービスが相互に補完され,結果として患者にもたらされる効果を求めてゆく姿勢は,システムとして具体化されている.
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