連載 —海外文献紹介—Current Nursingピックアップ・25
急性錯乱状態:研究動向と今後の課題
山田 信子
1
1東京女子医科大学看護短期大学
pp.360-363
発行日 1996年4月1日
Published Date 1996/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905064
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
集中ケア病棟や外科病棟,老人病棟などで,しばしば遭遇する対処困難な問題の1つに,いわゆるICU症候群,術後精神障害,せん妄,不穏状態があげられる.突然,居場所がわからなくなり,つじつまの合わないことを言ったり,暴言を吐いたり,激しい腕力で医療者の処置を拒否したり,ときにはチューブ類を抜去して生命に危険を及ぼす場合さえある.原因追究や解決策を講じていると,いつのまにか良くなったり,良くなったかと思っていると症状が違ったかたちでひどくなって現われるなど,症状の多様性・緊急性,予測の困難性,アセスメントとケアの同時進行性が問題解決をより難しくしていると思われる.
本稿では,こうした複雑な現象となって現われる患者の健康問題を「急性錯乱状態(Acute Confusional State)/錯乱状態(confusion)」の用語を使って紹介したい.この用語は,独国学派の流れをくむ本邦ではあまりなじみがないが,意識障害のメイヨークリニック分類を用いる米国などでは多用されている.急性錯乱状態は定義上,ICU症候群,術後精神障害,せん妄などと交換可能な認知領域障害の用語であり,意識障害のレベルとしては軽度に位置づけられている.わかりやすく言えば,医学診断分類で用いられる「せん妄」よりも軽い段階の意識障害と考えていただいて良い.
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.