特集 いま,癒し手としての看護について
ロジヤース理論にみる,癒しのプロセスとしての看護
坂口 千鶴
1
1日本赤十字看護大学
pp.838-841
発行日 1995年9月1日
Published Date 1995/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904888
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
見直されつつある癒しと看護のかかわり
現代社会において,科学技術の発達は,我々の生活をより効率的,機能的に変化させたが,一方で,自然破壊,人間疎外など多くの弊害をもたらすことにもなった.医療面においても,医学技術の発達は,専門分野の細分化により,多くの客観的データをもとに疾病の原因をつきとめ,治療効果をあげてきた.しかし,ストレスや日常生活に深くかかわった疾患については,単に原因を取り除けば治癒するというものではなく,その人の生活全般,生活信条,価値観,あるいは自己イメージまで心身ともに治癒する必要がある1).このような状況で,いま「癒し」の概念が注目されている.
「癒し」は,古来より人間の生活に密着し,自然治癒力を利用して原始宗教にかかわるシャーマンなどがいろいろな技法を使って,病に対処してきた2).しかし現代では,科学の発達により,専門の医療者が病を治療するようになったが,人間の自然治癒力を重視するというよりも,高度の医療機器を使った技術が強調され,「癒し」の側面は非科学的なものとして扱われるようになった.しかし,前述のような状況の変化を受け,また1970年代より始まったから,ニューサイエンス*やトランスパーソナル心理学*の影響により「癒し」が見直されつつある.
Copyright © 1995, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.