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助産における男女平等 主役不在の論議を考える―お産—女と男と—差恥心の視点から
小原 裕子
1
1東京大学医学部保健社会学教室
pp.270-271
発行日 1995年3月1日
Published Date 1995/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904768
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著者は,前著『助産婦の戦後』(勁草書房)に引き続いて,日本の医療体制の中で,あるいは地域社会の中での助産婦の地位確立の意味を取り上げる.本著では副題にあるように,特に出産や月経に関する羞恥心をテーマに,助産婦が女性であることの意味を問い直し,さらには,1988年に臨時国会に提出された助産婦資格の男子への対象拡大に関ずる議員立法の動きにも言及している.読者の中には,著者が朝日新聞の「論壇」に数回に分けて助産婦への男性開放論に対し疑問を呈したことを記憶される方も多いと思う.本著ではその論拠を,幾多の集団(一般大学生や看護学生,産婦人科病院へ通院する人々等)を対象とした質問紙調査,および医師,助産婦等に対するインタビューを通して得られたデータに求め,さらに羞恥心やその周辺概念に関する国内外の文献を取り上げ,幅広く各論を紹介している.
第一章では,戦後の連合国総司令部(GHQ)による占領行政(米国の医療制度にならい保健婦,看護婦,助産婦の一本化を行なうことで助産婦を廃止させようとした)を取り上げ,「日本の現状を綿密に見た上で具体案を練るというよりは米国の医療モデルに従った『あるべき姿』を短兵急に植えつけようとするものであった」とし,その一面的な発想の傾向を批判する.
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