特集 針刺し事故—そのショックとリアリティ
AIDS“先進国”フランスの場合
亀谷 ふさ子
pp.717
発行日 1994年8月1日
Published Date 1994/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904608
- 有料閲覧
- 文献概要
パスツール研究所を筆頭に,AIDS研究の権威国であるフランス.患者の対人口比も欧州第一にあげられ,新しい感染者の報告は1週間に110件とうなぎのぼり.この国ではAIDS感染者を身内や友人に持つことはごくありふれたことで,仕事の契約をする際にも検査を求められるなど,すっかりフランス人の生活の中に“浸透”しているように感じられる.
最前線で働く医療従事者たちに業務感染について聞いてみた.AIDS研究のエキスパート,ジラルド医師(8月に横浜で開催される国際エイズ会議で来日予定)は「感染の経路は多量の血液との接触が要因となるもので,業務上のリスクはきわめて低い」との見解.しかし実践面で1番のリスクを背負う看護婦になると,危険に対する意識も若干変わり,やはり注射器を持つ手は慎重になるようだ.「重要なことは,注射器を扱う時や出血時には,手袋をはめ,ゆっくりと看護にあたること.それとAIDS患者だという恐怖心を持たず彼らを精神的に理解してあげることが肝心」と看護婦のシルビー・ソロネーは言う.ただ,日本の臨床看護では,“ゆっくりと”が一番難しく,また手袋への拒絶感は患者・看護婦双方とも根強い,そのためにリスクを低くできないのが現状だろう.
Copyright © 1994, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.