連載 私が訪問看護に魅かれる理由・1【新連載】
訪問看護との出会い
小沼 絵理
1
1南大和訪問看護ステーション
pp.666-669
発行日 1994年7月1日
Published Date 1994/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904595
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ビルの谷間のお年寄り
私は,家族の入院体験や福祉関係の仕事をしていた母の影響などもあってか,小さい頃から福祉や医療の分野で仕事をしたいと思っていた.最終的には看護を選んだのだが,中でも地域看護には魅せられるものがあり,またちょうど学生だった頃から「在宅医療・看護」というものがクローズアップされてきたことなどが,私をより地域看護に結びつけていった.そこで私は地域医療=保健婦と考え,看護短大を卒業と同時に聖路加看護大学へ編入学し,保健婦になるべく勉強を始めた.しかし,実習で体験した地域看護は,自分がめざしているものとは少し違う,もっと的を絞った活動があるのではないかと感じていた.
そんな時,卒業論文作成のため,ある区の老人の調査に出かける機会に恵まれた.東京のど真中,ビルの谷間にまるで隠れてでもいるように暮らすお年寄りたちを目の当たりにしたショックは大きかった.学生ではあったが,訪問すると,「お待ちしていました」とばかりに相談を持ちかけられた.あるケースは,後期高齢者の寝たきりとなっている人で,やはり高齢の娘が介護しており,褥創があり,吸引も必要としているような状況であったにもかかわらず,看護の手はまったく入ってなく私の訪問を待っていたという状況であった.当然,学生の自分には介護指導などできるはずもなく,すぐに教官から保健所保健婦に連絡してもらい看護がかかわるようになった.
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