特集 患者の生活の場へ—訪問看護の実践
この人たちとの出会い—私の訪問看護記録から
山口 延子
1
1佐倉保健所
pp.487-491
発行日 1976年5月1日
Published Date 1976/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917873
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在宅で,療養にも生活にも意欲のない結核患者
結核の届出があって最初に訪問した時,Aさんはもう既にK院に入院し,その母親もAさんの付き添いのために家には居なかった.その後Aさんが入院中に母親に面接したところ,Aさんは2男で30歳,自動車のプレス工員であったが,どこでも長続きせず職場を転々と変えていた.母親は丈夫でなく,心臓弁膜症と肋膜炎で昭和43年に約2か月半入院したことがあり,それ以来難聴もある.この母親は花火の内職をし,生活保護を受けながら細々と生計をたてている.Aさんのほか,姉・兄,それに妹2人がいるが,全員家を出て全く寄りつかない様子である.父親はAさんが10歳のころ脳卒中で死亡している.
入院してから1年半後に突然福祉事務所から連絡があって,Aさんが自己退院したまま治療しないので訪問してほしいという.主治医に連絡をとると,Aさんは当初,重症(bⅡ3)で入院したが病状が軽快(現在bⅢ1)するとともにしばしば外泊し,主治医が注意したところ,怒って自己退院した.外来治療でも可能だが,病院では責任が持てないとの返事であった.ケースワーカーより,生活保護家庭であり,母も病弱なので家庭療養は不良と思われること,また国立療養所へ紹介したところ診察を受けずに逃げ帰り,療養所でも心証を悪くし,治療を拒否されたとのことである.
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