グラフ 目でみるエイズ
エイズの感染病理像
倉田 毅
1
,
佐多 徹太郎
1
1国立予防衛生研究所感染病理部
pp.2-3,12-14
発行日 1993年1月1日
Published Date 1993/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661904169
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エイズ(AIDS=後天性免疫不全症候群)とは,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が免疫能の根幹をになうヘルパーT細胞を特異的に破壊した結果としてみられる免疫不全状態での種種の病原体による感染あるいは腫瘍などの総合像である.急性あるいは持続性のいくつかのウイルス感染症の病理像を注意深くみてくると,その本体において,エイズのそれはかなり異なっていることが分かる.すなわち,通常ウイルス感染の病理材料では,主役を演ずるウイルスとその病巣は常に一致しているがHIV感染ではそうはならない.つまり患者が死亡する時点において病理材料に主役(HIV)がみえてこないのである.このあたりをよく理解しておかないとエイズの病気としての問題点が分からなくなる.
エイズの代表的肺所見のカリニ肺炎やサイトメガロウイルス肺炎(症例の70-80%に合併)は,エイズ解剖例の登場する15年位前から病理学領域にあらわれている.多量の抗腫瘍剤,免疫抑制剤,ステロイド剤投与による免疫機能低下状態での日和見感染像は,HIV感染でのそれと区別できないことが多い.基礎疾患が一方にあり,後者では,健康状態からいきなり上記の状態になる点が全く異なっている.HIVは,一部のヘルペス群ウイルスや麻疹ウイルスのような核内封入体や細胞質内封入体を形成しないため,感染細胞を顕微鏡下で特定することができない.
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