特集 ベンチレータと生きる人々—求められる地域生活支援
呼吸管理の基礎知識
石川 悠加
1
1国立療養所八雲病院小児科
pp.126-132
発行日 2002年2月1日
Published Date 2002/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661903898
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自発呼吸できる/できないは何で決まるのか
自発呼吸の吸気では,呼吸筋の収縮で胸郭が拡大し胸腔内に陰圧を作り,外気を吸い込む.呼気時には肺および胸郭の弾性収縮力により元に戻り,排気される.この呼吸リズムは脳幹部,延髄で形成され,呼吸筋が駆動され,肺でのガス交換が維持される1).
呼吸は,通常の状態では一生涯,無意識に続けられる.しかし,さまざまな原因により急性や慢性(緩徐に進行し1か月以上持続)に呼吸機能が低下し,動脈血炭酸ガス濃度(PaCO2)のヒ昇(45mmHg以上)を主体とする換気不全(原因は,換気中枢の機能不全,呼吸筋までの神経伝達障害,呼吸筋障害,胸郭の異常,気道の障害,死腔換気の増加,CO2産生量の増加などによる)や,動脈血酸素濃度(PaO2)の低下(60 mmHg以下)を主体とする低酸素血症(原因は,吸人気酸素分圧の低下,酸素濃度の低下した空気の吸入,肺胞低換気と,肺の酸素化に障害のある換気血流比の不均等,肺内右—左シャント,肺胞膜拡散障害,混合静脈血酸素飽和度の低下などによる)が起こる1).このように,動脈血液ガス分析値が異常を示したり,正常に保つために呼吸仕事量が著しく増大する場合,自発呼吸だけでは生体が正常な機能を営めなくなる可能性がある.
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