2001フロントライン ケアリング
看護のための〈トランスパーソナル〉なアプローチ—患者の内的世界をより深くとらえる枠組み
守屋 治代
1
1東京女子医科大学看護学部
pp.1036-1041
発行日 2001年11月1日
Published Date 2001/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661903855
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
ある非日常的体験
心身の危機的状態におかれた患者や,そのような患者と深くつながる看護を実践している看護者のなかには,その非日常性ゆえにあえて周囲に語ることはしないが,これから述べようとするトランスパーソナルな領域に近い体験をしている方が少なくないのではなかろうか.
たとえば,肺癌末期を告知されたある女性との会話を思い出す.それは,身体的苦痛が少なく精神的にも穏やかに過ごされていることを話題にしたときのことである.その方の話によると,「夜になるとベッドの足元のあたりに,白い着物のそれは美しい観音様のような姿の方が現われ,その姿を見るととても身体が楽になり,気持ちが安心して静かになる」のだという.日頃から知的にも社会的にも安定した人物であり,脳への転移もみられていなかったので,話される状況から考えて筆者は,そのとき,その言葉どおりに受け取った.このような状態について精神医学的,脳生理学的な分析をする立場もあると思われる.しかし,大切なことは,言葉にできないような体験やイメージを,この方がこのように語ってくれたという事実である.このような日常的な自分を超えた体験について,どのように扱っていけばよいのだろうか.
Copyright © 2001, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.