新 病院建築・81
病室の快適性についての評価—空間の視覚的印象として
中村 洋一
1
Yoichi NAKAMURA
1
1(株)鹿島建設建築設計本部
pp.793-799
発行日 1984年9月1日
Published Date 1984/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208406
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はじめに
最近の病院建築の機能面,設備面での進歩は目覚ましいものがあるが,患者にとっての快適環境の実現という点においては,いまなお改善の余地が残されているといえる.一方,医療における人間性尊重を求める社会的要請は高まりつつあり,病院は冷たく巨大な〈機械〉から温かく人を迎える〈建築〉への変貌を強いられることになろう.それはコスト,運営にからむ広さの問題,あるいは医師,看護婦等への信頼感他の患者との相性といった人間的要因に負うところも大きいが,建築設計の立場よりも室内の視覚的印象が大きく影響を持つことが見のがせない.ところが,温湿度条件,騒音,臭気,食事の良悪等他の設計にかかわる体感的要因は技術的にかなりのレベルにまで高めることができるが,視覚的印象は従来個人差の領域として改善のルートが曖昧とされ,設計者の感性により計画が進められてきた分野である.
そこで,病院の中で患者が最も長く滞在し重要である場〈病室〉を当面の対象とし,室内の印象に対する心理面の調査を定量的,客観的に行うことにより,患者にとって視覚的に良好で快適な病室であるための具体的条件を導き出すことを研究の目的とした.
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