特集 病院枕を分析する
枕を見直す—生活の中の小物・治療用具としての小物
小板橋 喜久代
1
1群馬大学医学部保健学科
pp.502-504
発行日 2001年6月1日
Published Date 2001/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661903745
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枕への関心・無関心
療養する身体を具体的に支え,病床での生活の安楽のためになくてはならない寝具類のひとつに枕がある.しかし,枕についての関心はベッド(あるいはマットレス)ほどではないように思われる.ベッド(マットレス〉については,小原ら1)の人間工学的研究によって,基本的な構造上のポイントが指摘され改善されてきた.人が臥せたときのベッド上の重さは一様でなく,身体部分重量比が異なる.また夜中の寝返りの様子の観察から,重量のもっとも大きくかかる轡部骨盤帯や上体部肩甲帯を支える部分のスプリングの強さを調整したり,一般に安眠できるサイズとして90cmの幅が必要であるとされている.しかし実際には,マットレスの構造上の工夫だけでは,患者の療養上の姿勢や体位を保持することは難しい.患者は健康なときとは違って,非常に多くの時間をベッド上で過ごすことになるし,姿勢について特殊な治療上の制約が課せられる場合もある.
看護者はベッドサイドにいて,治療期間のある時期,患者の苦痛を軽減するためにさまざまな支持枕の工夫をしている.しかし,枕が合う・合わないは個別性が大きく,支えの必要な時期も治療過程のある一時期に限定されることが多いために,その場その場での工夫と代用枕でしのいでいるのが現状であろうか.
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