連載 考える
ターミナルケアからの歩み—一看護婦の「物語」・4
キュブラー・ロスのワークショップにて
竹内 輝江
1
1大阪府立病院外科病棟
pp.374-379
発行日 2000年4月1日
Published Date 2000/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661903452
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私の原点
私がはじめて死ぬことの痛みと悲しみに直面したのは高校3年生のときでした.親友の母親が胃がんで亡くなったのです.親友は,比較的小康状態を保っていた母親が突然亡くなるまで,予後不良であることはおろか,がんであることすら知らされていませんでした.突然に母親の死に直面した親友は,大きな衝撃を受け,抑鬱状態に陥ってしまったのです.
そんな親友を目の前にして,病気や死とほとんど無縁に育った私は,死別の苦しみや悲しみとどう向き合ったらいいのかわからず,途方に暮れてしまいました.励ましたらいいのだろうか,気晴らしをすすめたらいいのだろうか,いくら悩んでもわかりません.一緒に出かけようと誘ったり,私なりに思いつくことはしてみたのですが,少しも元気を取り戻してくれません.「予期悲嘆を経験しない人は,死を受け入れるのに時間がかかる」ことなど知らなかったので,親友はずっとこのままかもしれない,と思うことさえありました.
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