連載 驚きの「介護民俗学」 ・2
散りばめられた言葉を紡ぐ
六車 由実
pp.74-79
発行日 2010年4月1日
Published Date 2010/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661101616
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認知症による「問題行動」
昭和3年生まれの鈴木正さんは、重度の認知症で、場所や時間についての見当識障害があるばかりではなく、日常的な会話もほとんど成り立たず、デイサービスに来ても徘徊のたえない利用者さんであった。昼食やおやつのとき以外は5分と座席にとどまっていることはなく、デイルームのなかを歩きまわったり、気がつくとデイルームから出て施設内をうろうろとしていることもたびたびだった。
もちろんデイサービスには他にも徘徊や帰宅願望の強い利用者はいる。だからそうした利用者への対応は慣れている。だが、職員にとって鈴木さんの徘徊への対応が厄介だったのは、鈴木さんが人のいるところへ近づいて行って話しかけるということだった。
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