連載 臨床の詩学 対話篇・6
不意の言葉
春日 武彦
1
1多摩中央病院
pp.66-73
発行日 2010年4月1日
Published Date 2010/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661101615
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言葉でのやりとりというものは、思っていた以上に論理的でない。対談を録音し、そのままテープ起こししたものを読むと、呆れるばかりに繰り返しや飛躍や非論理的な部分が多い。よくもまあ、あれで会話が成立していたものだと訝しくなるが、場の雰囲気や勢いが、辻褄のきちんとしていない部分を自動的に修正していたということなのだろう。
診察室における面接も、テープに録ったら冗長で曖昧で沈黙がやたらと多く、聴いているのが嫌になるに違いない。ラジオドラマのようなわけにはいかない。
ただし非論理的な要因(話の脱線)が、面接の流れに変化をもたらすこともある。膠着状態から脱出する手掛かりとなり得るわけである。以下は、親友に裏切られて以来人生観が変わってしまい、抑うつ気分と不安発作に悩まされているという24歳の女性(宝飾品販売)との会話である。
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