書評
生きるための緩和医療―有床診療所からのメッセージ
川島 みどり
1
1日本赤十字看護大学
pp.964-965
発行日 2008年11月1日
Published Date 2008/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661101353
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正真正銘の緩和ケアとは?
入院をしなければならない病気や手術に直面することは,それ自体が非日常的なできごとであり,当人はもとより家族の不安や当惑も大きい.まして,完治とはほど遠く,自立生活も覚束ない状態のもとで退院を迫られるのが,今日の一般的な医療の姿であり,医療難民とかがん難民といった言葉さえ生まれている.一方,3人に1人ががんになり,2人に1人ががんで死ぬという時代.「がん対策基本法」の制定を待つまでもなく,緩和医療・ケアは人々の強いニーズでもある.
また,人生の終末をどのように迎えるか,どこで迎えるか,施設か在宅かをめぐる葛藤は,個人の思いを超えて深刻である.自身の経験から,緩和医療とか緩和ケアという言葉を聞くたびに,これを利用する患者や家族の思いと重ねる習性が身についた.診療報酬が先導した形で始まった病院の緩和医療・ケアの内実は,多くの人々の期待にフィットしているとは思えない.がんだけを取り上げてみても,積極的な治療を実施している間は入院できない制約があったり,包括医療報酬によって,患者や家族のニーズに沿ってもらえない実態もある.緩和ケアは選択の時代になったというが,当事者になってはじめて積極的に求める情報の不確かさと浅さ,選ぶ基準もなければ,選ばれる側の情報提供も不十分であると思う.
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