連載 世界の感受の只中で・19
生存・1
天田 城介
1
1立命館大学大学院先端総合学術研究科
pp.994-999
発行日 2008年11月1日
Published Date 2008/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661101352
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「私達は私による世界の制御不可能性の上で,何かをしたりしなかったりするのであり,そこでどれほどか私の意のままに私と私の周囲とがなることから確かに快楽を得ているのではあるが,その不可能がすべて可能になった時には,私達にとっての快楽もまた終わると言っているのである.制御しようとする,制御しつくそうとする欲望をそれ自体として否定しようというのではない.しかし,ある者にとって制御しないことからくる快楽が否応なく否定されるなら,とりわけ,もう一つの快楽,例えばただ生きてあること(これもまたその者に与えられてあるものだ)と引き換えに否定されるなら,少なくともそれは悲惨なことだと言いたいのだ.これがかなり基本的な感覚,倫理であるのは確かだと思う.上述のような感覚,価値観をもってこないと,私達が行っている基本的なよい/わるいについての判断を導くことが論理的にできない.(立岩1997:114.115)
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