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はじめに
最近,統合医療(Integrative Medicine)や代替医療という言葉をあちこちで耳にするが,論者によって異なる意味合いで用いられている場合が多いように思う.
ここでは,統合医療とは,現代西洋医学に相補(補完)・代替医療(Complementary and Alternative Medicine:CAM)を融合させ,個々人に合わせた最適な医療をコーディネートし,また予防や健康の保持・増進のためのケアを行なうもの,として考える1).
相補(補完)・代替医療とは,米国国立相補(補完)・代替医療センター(NCCAM)によれば「科学的に未検証であり,現時点では通常の医学・医療体系の構成要素になっていない医療的実践」とされている2).具体的には図1に示したものがこれにあたる.なおこの分類は厳密なものではなく,実際は複数のカテゴリーに該当するものも多い.例えばアロマセラピー(アロマテラピー,芳香療法)はMind-Body medicineにもManipulative and body-based practicesにも属する要素を持っている.本稿では,相補(補完)・代替医療の代表として,アロマセラピーとヨーガを中心に述べる.
相補(補完)・代替医療が治療効果をもたらすメカニズムについては色々な仮説があるが,共通して言えるのは,ほとんどの場合,本来われわれが有している自己治癒力を高める結果と考えられる.アロマセラピーやヨーガには,本特集で川村があげている7つの自己治癒力向上要因3)に該当するものが多数ある.たとえば,両者ともリラックス状態をもたらすものであり,また施行者とのラポールが重要である.さらに施行者がコンサルテーションやカウンセリングを行なう場合,精神的支援のリソースとも成り得るわけである.
両療法の概略を述べるが,アロマセラピーは植物から抽出した100%天然の精油を活用するもので,その効果は複合的である.用い方にもよるが,精油香気成分の経鼻腔や経肺,あるいはオイルの経皮吸収による神経・免疫・内分泌系への作用および種々の臓器への影響,タッチングやトリートメント(施術)でのさまざまな手技の効果に加え,コンサルテ-ションやカウンセリングなどが相乗的に影響し,心身の疲れをほぐし心の癒しにいたると推定される.
一方ヨーガの効果も複合的である.これは身体,心,気,スピリチュアリティなどへ統合的なアプローチをし,健康と安寧状態を得ることを目的として,広くアーサナ,プラーナーヤーマ,ディヤーナなどをとり入れた包括的に体系付けられたものであり(図2),リラクセーションが深められ身心一如への気づきを促す作用を持つ.またヨーガは精神生理,神経内分泌,自律神経機能に影響することから心身症や精神関連疾患の一部にも有効であると考えられ,近年では,伝統的なヨーガを医学や心理学に役立てようとするヨーガ療法の研究と実践が進められている.
以下,各々の実施例を紹介する.
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