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はじめに
拡張型心筋症は,自分の生活行動に関係なく突然発症し,悪化進行する予後不良な慢性病で,心移植しか根治的治療方法はなく,心移植待機患者(以下待機患者とする)の74.2%1)は拡張型心筋症である.
我が国では,1997年に臓器の移植に関する法律2)(以下,臓器移植法とする)が施行され,2006年末現在では,臓器移植を受けた患者数は全臓器合わせて1258名3)と除々に増加してきている.その一方で心臓移植(以下,心移植とする)を国内で受けた患者は1258名中38名4)と心移植が臓器移植の中で占める割合は格段に低いという厳しい現状がある.
待機患者の抱えている問題は,心不全による身体的苦痛,自分の生命に対しての多大な不安,家族,社会的役割の変化,経済的問題など多面的であることに加えて,心移植待機のシステムも複雑であり,もっとも身近にいる看護師の役割と影響は大きい.
このため待機患者の看護に当たる看護師の困難感5)も高いことが近年注目されてきている.先行文献では,補助人工心臓(Ventricular Assist System;以下VAS)を装着している待機患者を担当する,心移植認定施設の看護師が感じる困難感には「精神的看護に対する気負い」「ターミナルケアに対する苦手意識」「~せねばならないという看護師の意識」があることが明らかになった6).
国内の心移植認定施設は2006年現在7施設7)であるのに対して,心移植適応患者は年間228~670人8),待機候補患者は18,771人と推定され9),これらの患者のほとんどは,本研究の対象施設のような非認定施設で治療を受けている.本研究の対象施設は,各地から心移植待機患者や待機候補患者が入院しており,患者らは,告知直後で衝撃を受けていたり,待機リストへ登録希望するか意思決定を迫られていたり,VASは必要としないまでも,持続点滴を長期的に行なっているような状態である.
このような患者らは,先行文献のようにVASを装着している患者とは病期が違うことから,異なる不安を抱えていると感じ,それらを担当する看護師も,施設の性質が違うことなどから異なった困難感を持っていると推測されるが,明らかになっていない.
そこで,心移植非認定施設看護師が,待機患者・待機候補患者を看護する際,どのような困難感を感じているか調査し,それらをもとに心移植待機に関する情報の共有およびケアの振り返りを目的とした勉強会を実施した.その結果,看護師は患者理解についての気づきを得た.これらを質的帰納的に分析することは,待機患者の援助を行なっている看護師の実践活動に寄与すると考える.
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