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はじめに
がん化学療法は多くのがん治療に用いられているが,その副作用のひとつである骨髄抑制により,白血球数が減少し,重篤な感染症を引き起こすことがある1,2).そのため白血球数減少患者に対しては,顆粒球コロニー刺激因子や抗菌剤が使用され1-3),感染予防のために清潔ケアが実施される.
清潔ケアは,入浴,シャワー浴,清拭などの全身の皮膚の清潔を保持するものと,口腔ケアなど局所粘膜の清潔を保つものとに大別される.全身の清潔ケアは,患者の発熱など一般状態に問題があれば,体力の消耗を考慮して制限4)したり,患者の状態に合わせてケア方法を選択する場合5-6)がある.一方で骨髄抑制により易感染状態にあっても,毎日の清潔ケアを推奨するガイドラインもある7-10).このように清潔ケアの選択基準は明確ではなく11),看護師の対応にも個人差がある12).
筆者らは先に,易感染患者の清潔ケアに関する看護師の判断行動について調査した13).その結果,多くの看護師は患者の白血球数を判断基準にして,清潔ケアを制限していた.また,看護師が「患者の清潔ケアは可能」と判断したにもかかわらず,医師に反対された経験を持つ者が半数以上おり,ジレンマやストレスを抱えていた.さらに,看護基準・マニュアル(以下,「基準」)がある病棟に勤務する看護師の多くは,清潔ケアを実施する際に医師には相談していないことも明らかになった.
以上のことから,「基準」は看護の自律を促進させることが示唆されたが,「基準」を有している病棟は少なく13),エビデンスに沿った「基準」の確立が課題として残された.また,「基準」の特徴や患者の清潔ケア制限の関係,さらに,清潔ケアに関する看護師の意識との関係を明らかにする必要があると考えた.
そこで,がん化学療法により易感染状態にある患者への清潔ケアに関する「基準」の有無と,患者の清潔ケア制限との関係を明らかにすることを目的として本研究を行なった.
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