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NA(Nurse Anesthetist)は,わが国には存在しない制度で,麻酔看護師とよばれ,麻酔医と看護師の中間に位置するパラメディカルである.米国から発祥し,マンパワー不足を補うために設けられた制度である.麻酔看護師(NA)といえば米国のNAを思いうかべるが,アジアではタイ,インドネシア,台湾などでNA制度が採用されている.インドネシアでは,NAはPerawat Anestesiaとよばれ,不足しているマンパワーを補っている.筆者はすでにタイのNA制度について報告1)しているが,今回インドネシアのNA制度を調査する機会があったので,その現状を報告する.筆者は日本学術振興会の特定国派遣研究員として選ばれ,インドネシア第二の都市であるスラバヤのAirlangga University School of MedicineのResidency program of Anesthesiologyにおいて,Prof. Rahardjo Eddyとインドネシアにおける麻酔の現状,とくにNAについての共同調査を行なった.
Prof.EddyのAirlangga Universityは1500床,麻酔医管理症例1500件(年間),麻酔医(26人),レジデント(75人),NA(57人)で管理している.日本のODAの資金で建てられたスラバヤでも代表的な政府系の病院である.医療器具,麻酔器,レスピレータも日本製のものが多かった.同時に地方におけるNA調査として,バリ島のデンパサールにあるCabang Bali病院のDr. Wayan Sukuraとの共同調査も行なった.
インドネシアの人口は約2億人で,中国,インド,米国に次いで世界第4位,その60%がジャワ島に住んでいる.日本とインドネシアの人的資源,経済状況を表1に示す.これによると人口100万あたりの麻酔医の数は,日本の約30分の1になっている2).インドネシアはSumatra, Java, Kalimantan, Sulawest, Bali, Maluku, Irian Jayaなどの大きな島と,そのほかの小さな島々からなり,大都市と離島では医療事情が大きく異なる.1991年現在,医師数は2万5000人,看護師などパラメディカルの数は20万人と報告されている.NA制度を取り入れているのはジャカルタ,スラバヤ等の大都市である.
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