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はじめに
褥瘡の予防は,全身的,局所的な褥瘡発生のハイリスク因子の同定と,これら因子の除去により可能となる.すなわち,除圧,体位変換,感染の予防などによる局所的ハイリスク因子の排除と,栄養状態の改善による全身的ハイリスク因子の排除である.
栄養不良は,高度侵襲時(高度侵襲手術後,外傷,重傷熱傷)における重傷病態下1),全身感染症(炎症,敗血症,肺炎など),経口摂取不能による必要栄養素量の不足などにより,負のタンパクバランス,免疫力の低下から,全身状態が悪化し発生する.また,低栄養が進むと,貧血や浮腫が生じ,圧迫への耐性も悪くなり褥瘡が発生する.褥瘡創傷部位から血清タンパクなどを含む体液が漏出すると,さらに栄養不良となる.したがって,寝たきりでかつ低栄養患者は褥瘡ハイリスク因子を持った患者であり2),体圧管理,スキンケアなどの局所管理のみならず,全身管理としての栄養管理が褥瘡予防を行なううえで重要となる3).栄養状態の改善には,適切なエネルギー基質4),タンパク質,微量栄養素(ビタミン,微量元素)5)の投与,および水分管理が必要である.とくに,高度侵襲手術後患者や糖尿病,肝疾患,腎疾患などを有する患者では,さらに褥瘡発生のリスクが高くなるため,病態に応じた栄養管理が不可欠となる.
適切な栄養管理を行なうためには,栄養状態のスクリーニングにより,栄養不良患者を早期に発見,特定する.さらに,摂取栄養素量および栄養学的パラメーター(身体計測値,血液・生化学データなど)による総合的な栄養アセスメントに基づいて個々の患者に必要な栄養素量の算定を行なう.経口摂取量に不足があればサプリメントを用い,それでも充足できない場合には経腸栄養法や静脈栄養法を行なう必要がある6).
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