連載 あなたがエビデンスを生み出す! 臨床看護研究の骨と肝(6)
経験的な仮説を臨床場面で実証する「準実験研究」
櫻井 利江
1
1筑波大学医学専門学群看護医療科学類
pp.1237-1241
発行日 2004年12月1日
Published Date 2004/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100582
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
前回までのあらすじ
事例研究に端を発して,立ち上がる前に「声をかける」ことの有効性について,今まで追求してきました.ポータブルトイレからベッドに戻るときに“ふらつき”を感じる患者さまの多いことをなんとかしたい,という臨床家の願いが,すべての始まりでした.
事例研究では,過去の看護記録から,該当する場面だけを抽出して検討してみました(第3回).すると,「立ちますよ」と声をかけると,どうやらふらつきが見られない“らしい”ということがわかりました.原石の発見です.そしてアクションリサーチでは,かなり統制した形で介入を行ない,事例研究のところで関連があると思われるものを話し合い,文献的に裏付け可能なものを変数として効果を見ていきました(第4回).ただし,声をかけるという行為そのものに関しては先行研究がありませんでしたので,その場面の詳細な記述によって変数の“見逃し”を防止する手段を講じました.結果,ふらつきを起こした人はベッドから戻ったときに血圧が低い,ということが見えてきました.
そこで,前回は,実験研究によって「声をかける」ことの効果がなぜ現われるのか,その機序を見てみました.すると,声をかけることにより,血圧をコントロールしている交感神経活動が,立ち上がることに先んじて活性化されることが明らかになったのです.さらに,糖尿病の方の立ち上がり場面では,脳血流の戻りが遅いことが判明しました.これがふらつきを引き起こしていたのです.
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.