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わが家には大きな猫が4匹おります.カンボジアではめずらしく丸々太っていて,かわいいんです.でも,そのかわいいわが子たちがよその家で粗相をしていることが判明! “うちの子にかぎって…”なんて思っていたんだけど,先日,階下に住む大家さんから「この女の子の猫と,いちばん大きな男の子の猫が私のシャツにおしっこするのよー」と言われてしまいました.日本人の私は,思いっきり恐縮して,「ごめんなさい」を連発し,どうやってわが子を家のなかに閉じ込めておこうかと頭のなかで考えていました.ところが,大家さんは,「はっはっはー」と笑い飛ばし,「うちの猫もそっちへ行ってごはん食べているからねー」と言って,あとくされなし! なんだか拍子抜け.日本だと,ペットボトルを置いて無言の抗議をしたり,眉間にしわを寄せながら「お宅の猫がうちへ入ってきておしっこして困るんです」なんて言われたり,動物に関する苦情はいつも陰湿な印象を受けていたけど,ここはいたずらな猫の飼い主には,楽園だ!! もちろん,動物が嫌いな人たちの権利も認めるし,一概に陰湿と決めつけた言い方はよくないけど,ここカンボジアではそういう気を使わないでいいのが動物愛好家にとってはたまらんのです.
日本では,こんな濃厚な近所付き合いはなくなりつつありますよね.お隣が何をしているのか知らない人もたくさん.井戸端会議という言葉がありますけど,たまに帰る日本で今そういう光景は見かけませんもの.お母さんたちの社交の場としては,“公園”があるらしいですね.でも,それも,あまりオープンな社交ではないようだし.カンボジアでは,村へ行くと誰と誰が家族なのかわからないくらいに,近所が一緒に交じり合っていたりするんですよ.“助け合う”ということが当然で,また,そうしないと生きてゆけないというのが現実なのだと思います.でも,このご近所との文字どおり“敷囲のない”関係が,ときには問題になっているような気もします.
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