特集2 患者の気持ち 家族の気持ち 代理決定をめぐる看護の課題
―決断を迫られた患者・家族のケア―意思決定が難しい要因とそのときナースにできること
武 ユカリ
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1京都大学大学院医学系研究科社会健康医学系専攻医療倫理学分野
pp.360-365
発行日 2005年4月1日
Published Date 2005/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100127
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はじめに
患者の意思を尊重することは,医療現場におけるケアの基本理念である.これは,患者に対するすべての医療行為に関する選択を,患者自身の自由意志(free will;他から束縛されず,みずからの責任において決定する意思)1)に基づいて決定し,それを第一の方針とすることと言い換えられる.
もし患者が意思表示できないときは,その家族が患者の代わりに決定することになり,その意思もまた尊重されるべきである.(代理決定者として家族が適任であるか,家族のほかに適任者がいるかといった議論もあるが,本稿では扱わない.また,「家族」は同居家族や近しい関係にある肉親などを指すこととし,明確な規定はしていない.)
医療者は,患者や家族が意思決定するプロセスを支援し,ケアする立場にある.本稿では,患者の生死にかかわること,患者や家族のその後の生活に大きな影響を及ぼすことなど,とくに重大な選択の場面について,患者や家族の意思決定の過程にある困難を整理し,どのようなケアができるかを考察する.
なお,「ケア」については,さまざまな分類や定義があるが,本稿では医療者が患者や家族に対して行なうあらゆる援助やかかわりのすべてを指すものとする.
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