特集 からだのメカニズムから看護技術を見直そう
食欲不振・不眠・便秘は病者の“三種の神器”
菱沼 典子
1
1聖路加看護大学
pp.32-37
発行日 2006年1月1日
Published Date 2006/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100004
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はじめに
「お食事はとれましたか.おいしかったですか」「よく眠れましたか」「お通じはありましたか」と,病院であれ,在宅であれ,看護職は日々このアセスメントを繰り返している.そして「食欲がない」あるいは「砂を噛むようだ」「眠れない」「お通じがない」という答を聞いたことがない看護職はいないだろう.
椎名誠の対談集のタイトル『喰寝呑泄(くうねるのむだす)』(TBSブリタニカ,1993)は,まさに日常生活の基本を示している.野々村馨は『食う寝る坐る永平寺修行記』(新潮社,1996)の中で,生きる基本として食べることと寝ることを語っている.病者に限らず,食事,睡眠,便通・排尿が日常生活の基本であることは,今さら説明する必要はないだろう.赤ん坊は眠って出しておっぱいを飲んでおなかが満足ならば機嫌がよく,お年寄りが最も気にしてさまざまに訴えるのはこの3つである.一方でこの3つは,社会生活の占める割合が大きくなるにつれ,しわ寄せを受け軽んじられる.
生活の基本,言い換えれば生命維持の基本である食事,睡眠,排泄という大切な営みが,病者の生活では食欲不振・不眠・便秘という,病者の“三種の神器”とも言うべき訴えになってしまうのは,なぜなのだろうか.これはストレス理論から説明が可能である.
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