MEDICAL SCOPE
脳性麻痺と周産期の障害
島田 信宏
1
1北里大学医学部産婦人科
pp.439
発行日 1995年5月25日
Published Date 1995/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611903383
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出生した新生児の発育過程において診断される脳性麻痺(cerebral palsyの略で,CPとよく言われている)は,産科周産期医療に関わっている私たちにとっては,とても大きな関心事です。脳性麻痺という後遺症を残した症例の発症原因はどこにあるか,つまり発症要因論は,これまで多くの研究がなされてきました。古くは脳性麻痺の3大原因として,出生時の新生児仮死,核黄疸,未熟児が挙げられました。
このなかで,核黄疸は今では成熟児からはなくなったと言えるので,残る未熟児と仮死の2つが問題となるわけですが,この10年来の多くの研究では,この他に原因がよくわからない症例や妊娠中の避けることのできない胎児側の偶発的なアクシデントを要因として発症するものが数多く存在すると発表されています。たとえば,妊娠中のある時期に胎児の脳組織内で出血が起こったり,血栓ができ,その部分の脳組織が発育を障害され,正常に生まれてきたものの脳性麻痺という後遺症を残す症例などがあることがわかってきました。また,なかなか画像診断でもわからないような胎児の先天性の中枢神経系の奇形や病変でも,脳性麻痺としての後遺症的症状を示す症例があることもわかり,これらの症例のほうが産科周産期医療での低酸素症が原因で発症する症例より多いと言われてくるようになったのです。
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