特集 知っておきたい歯と口の健康
妊娠期の口腔ケアにおける助産師の役割
味田 徳子
1
1東京医科歯科大学歯学部附属病院小児歯科
pp.893-898
発行日 2002年11月25日
Published Date 2002/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902979
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はじめに
妊娠は,それ自体が口腔内の生理機能を変化させる因子となり,非妊時より口腔環境は悪くなる。それを憎悪させる原因には,つわりとの関係がかなりみられる。口腔環境憎悪因子としてのつわり症状には,悪心・嘔吐・食欲不振・嗜好の変化・口渇などがあげられ,その管理が大切になる。そしてこのような口腔環境の悪化は,妊婦の虫歯(う蝕)や歯周病などを進行させるだけでなく,乳歯が妊娠7週から形成され始めるという口腔機能育成学見地から胎児の歯牙形成にも影響を及ぼすことがある8)とされている。
しかし,口腔内疾患である虫歯や歯周病は,一般的に「病気」としての意識が薄く,妊娠早期の歯科受診や予防的受診行動をとる妊婦は少ないものと思われる。私自身,助産師として妊婦にかかわった経験があるが,病院内における母親学級などの保健指導は,あくまでも「お産」が中心であり,「口腔衛生」については,あまり触れておらず,その知識を得る機会もなく,時間的な問題もあってか,保健所や歯科医院などに任せているのが現状であった。
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