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個別的発達促進ケア(いわゆるデベロプメンタルケア)とはIndividualized Developmental Care
この数年,日本のNICUの助産婦・看護婦の間に「タッチケア」や「カンガルーケア」を含めた新しいケアのスタイルが定着してきた。これらのケアはデベロプメンタルケアと呼ばれる方法であるが,すでに1980年初頭から,ハーバード大学の小児科で心理学を専門とするAls博士らが1,2),新生児の評価に基づいて,より適切に児にケアを提唱することが大切であるという考えから生み出されたものである。すなわち,新生児,特に未熟で生まれた児は,脳の発達が急速で感受性が高く,外から加わる外力の影響を最も受けやすいことから,赤ちゃんの反応を読みとり,その対応能力にマイナスにならないようにサポートすることと,児の発達を促す適切な刺激を与えることを目的としている。すなわち,子宮内にいると同様な発育・発達を期待するのである。その意味でデベロプメンタルケアの第一段階は,児の外的刺激に対する反応から児が何を必要とし,どのような状態であるかを評価し,読みとることである。そのためにはまず,評価方法を学び身につけることである。
残念ながら,現在の日本の多くのNICUで議論されているデベロプメンタルケアは,光や音の調節などのNICUの環境を変えることや,タッチケアやカンガルーケアのように,児にどのように働きかけるかに目が奪われ,第一段階のそれに至るための児の評価のステップが抜けているようである。さらに本来のデベロプメンタルケアは,一人ひとりの児ごとに評価し,プランを立て適切なケアを提供することを目的としている。NICU全体の環境を一律に変えたりルチーンの一部にデベロプメンタルケアを取り入れることは,本来の意味から外れる。
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